新・三銃士のルイ13世が好きになつた

子供の頃は楽しみにしてゐた人形劇も、最近は全然観てゐなかつた。再放送があると云ふ事で「新・三銃士」を観てみようと思つてゐたけれど、それでも初回分には間に合はず、気付いてテレビを付けた頃には三銃士が噴水の前に集まつてゐた。導入部を見逃した事もあり、最初は観る気が半減してゐた。にも関はらず、今ではすつかり毎週金曜日を楽しみにしてゐる。
しかし長い間人形劇を見てゐないこの間に、随分と人形劇は進歩したんだなと思つた。この人形が素晴らしい。木彫りなのかな。顔に薄く木目も見える。髪の毛も木彫りである事でキャラクターを際立たせてゐるやうに思ふ。女性陣の髪の毛は特に細かく彫つてあつて、ミレディーのヘアスタイルなんか良く出来てるなーと思ふ。手も、指など動かなくともキャラクターに合つた撓り具合で、どんな状況にも対応出来てゐるやうに見える。あの綺麗な瞳はどう云ふ事なんだらう。ライトの当て方だけで、塗料で塗つただけの瞳があんなに綺麗に見えるものなのだらうか。瞳の部分だけ七宝焼きのやうな輝きが感じられる。
そしてセットも凄い。奥行きが感じられるし、結構階段を登つたり木に登つたりの、高さも取り入れた動きや映し方もある。様々な角度から人形やセットを映すので、人形劇とは思へない空間が出来上がつてゐる。
人形の大きさはどれくらゐなんだらうと思つて公式ページを見てみたけれど、さう云ふ事は書かれてゐないやうだ。唯、三谷幸喜さんのインタビューのところにある画像で、ダルタニアンの顔が三谷さんのメガネの倍程度だつたので、顔の縦は10センチ程ではないかと思ふ。私が想像してゐたよりずつと小さい。
私が好きなキャラクターはルイ13世。何歳の設定なんだらう。
王妃と、「アン・ドゥ・トゥワロ。ソレイユ!」と云ふ、フランス版「だるまさんが転んだ」をやつて遊んでゐ事もあつたし、自室の玩具で遊んでゐる事が多い。
今までの中で一番印象に残つてゐる台詞――
王妃が不倫相手と密会して戻つて来る。王妃を見付け、さつき王妃の部屋を訪ねてもゐたかつたとし、何処へ行つてゐたのかを問ふ。無邪気なルイ13世なので、問ひ詰めた訳ではなくて、「どーこにいってたのぉ?」と云ふ感じで。
王妃の服に葉つぱが付いてゐる事に気付き、「こんな夜中に、森で何をしてゐたの?」と訊ねる。そこで悪女ミレディーが王妃の信頼を得るために助つ人に入る。「王妃、お月様は綺麗でしたか?」と。そしてルイ13世に、「満月に願ひ事をすると叶ふんですよ。」と言ふ。
するとルイ13世は窓に駆け寄つて、「ふわああああ。」と奇声を上げて満月を見てお祈りを始める。ミレディーが、「王様、何をお願ひしたんですか?」と聞くと、そこでルイ13世が、かう言ふんです。
「そんなの決つてるよ。フランス国民の幸せさー。」この台詞は馬鹿つぽく、「ふぅらぁんすこぉくみぃんのしあはせさー。」と云ふ感じで。
ミレディーもボソッと「案外まともな事言ふのね。」なんて言つてました。そしてルイ13世は月を見ながら、「だつて僕は、この国の王様だもん。」と言う。
この台詞が一番印象に残つてゐます。無邪気最強と云ふ感じがするのと、自分が王様だと言ふ事を自覚してゐて、この人なりの王様像があつて、無邪気な王様が「その王様像をやつてゐる」つて言ふところが、何か面白い。
それに、この台詞の前が王妃のピンチだつた事もあつて、ルイ13世の無邪気さに脱力しちやふ。緊迫の次にルイ13世の無邪気発言の場面がいくつかあつて、凄く楽しみです。
オープニングのスパニッシュな音楽も良い。物語を盛り上げてゐると思ふ。次回は前半最大の山場と言ふし、目が離せません。