綺麗好きになつてゐる話

私は不潔ではないけれど。只、几帳面でもないし、部屋はいつも使ひ勝手が良いやうに散らかつてゐる。埃なんて気にしません。死ななければそれで良い。ホルンの時は必要があつて良く掃除をしてゐたけれど、ピアノに限つては全体を磨くのは年に1度か2度。鍵盤を磨くのも気が向いた時にだけ。思ひ出したやうに、半分は義務的に、仕方なくやつてゐた。
けれどそれなのに。
今日は終に、練習前と練習後に鍵盤を愛しむやうに磨いてゐて、「あれ。こんな事をこんな気持ちでやつたの、初めてだ。」と驚いた。子供の頃からの歴史も含めて。
部屋を片付けられない人は心が荒れてゐるだとか、机の上が片付いてゐない人は仕事が出来ないとか言ふ話を、鼻で笑つてゐた私だけれど、嘘でもないのかな。なんて思つた今日の夕方。
でも、心が荒れてゐる証拠だから片付ける…と言ふ事で問題は解決しないのではないかと思ふ。自然にさうなるものなのだらう。
ところで、「新・三銃士」見ましたか?
陛下が、戦争はまう終はりにしよう。と決意するのですが、トレビル隊長が、国は常に戦で栄へて来た。武力を持たない国は滅びてしまふ。と助言する。「ぢやあ、どうすれば良い?」と言ふ問ひに、若い人と沢山話をして、迷つて、答へを見つけてください。と言ふ感じのやり取りがあつて、結論を出さないところが素晴らしいなと思ひました。
音楽でもさうだけれど、「この練習は1日何回くらゐやれば良いですか?」とか「理論つて必要ですか?」「技術ばかりぢや良くないんぢやないですか?」「コピーばかりで良いんですか?」等など、結論を急ぐ人が多いやうに思ふ。私は質問する余裕もなく、ただ信じて与へられる事を淡々とやつてゐたけれど。今振り返つても、信頼出来る人との出会ひや何も考へず練習した時期は貴重だつたと疑はない。けれど、それはいつか卒業するもので、人の言つた事をただ信頼してその道を行くのは少し卑怯…と言つてしつくり来ないけれど、良くはない気がする。安心して勉強したい人が多い気がする。迷ひながら、の迷ふところに結構良い教材がある気がする。
ああ…今日も下手だつたなあ。