スイス ウォッチバレー 〜不思議な時の国へのまとめ

vivaarare2009-11-18

11月16日に放送された、「世界遺産スイスウォッチバレー不思議な時の国へ」ですが、見逃した人が結構ゐるからなのか「ウォッチバレー」とか「不思議な時の国」で検索してゐる人が沢山ゐるので、ザックリまとめてみようと思ひます。
舞台はスイス北西部に伸びるジェラ山脈中腹部の街、世界的時計生産地である「ウォッチバレー」と呼ばれるこの地帯のラ・ショー・ド・フォンVille de La Chaux-de-Fonds)とベルン旧市街地(http://www.myswiss.jp/jp.cfm/culture/unesco/offer-Culture-World_Heritages-243927.html)。
ラ・ショー・ド・フォンは今年6月に文化遺産に登録され、ベルン旧市街地は15世紀初めの建物が並ぶ世界遺産
1年の半分が雪に覆はれるこの土地に、16世紀頃、宗教弾圧から逃れて来たフランスやドイツの職人が、この地に時計製作の技術を伝へた。この技術により、冬の間の収入源としての時計作りが始まるが、18世紀末、この地が大火災により焼け野原となる。そこで、真直ぐな道路に家と庭をセットで配置し、窓は細長く取り付け、太陽光を長く多く取り入れられる、時計製作に適した大胆な都市計画を実施し、本格的な時計産地になつた。時計生産の地らしく、スイス鉄道の全ての時計は1分毎に1秒半止まり、誤差を修正してゐるさうだ。

ラ・ショー・ド・フォン国際時計博物館の紹介もあり、18世紀のからくり時計やアンティーク懐中時計やペンダントウォッチが紹介された。Ville de La Chaux-de-Fondsでは、1550年頃からの時計の一部の画像を見ることが出来る。博物館の中では時計の修復作業を一般公開してゐる。なるべく当時の部品を使つた修復を心掛けてゐると言ふ。
博物館に続いて紹介されたのは時計工場。建物の外観は、TAG HeuerGIRARD-PERREGAUX。まう一つ映つた看板を解読出来ず。4文字程度だつたと思ふけれど。時計製作現場はジラールペルゴだつたでせうか。例の青いネジをダイヤモンドの粉で磨いてゐたり(ピンセットでネジを持つて板の上にダイヤモンドの粉を塗して擦る)、小さな埃の為に一度組み立てた時計を分解してゐた。1つの時計を完成させるのに1人が責任を持ち、1年に1人が完成させられる時計の数は10個。

ベルン旧市街地では、時計台の紹介が多かつた。管理してゐる時計の修復師さんが「500年前の作品」と言つてゐたので、あれは500年程前に作られたからくり時計なのか、正確な時刻の4分前にふざけたピエロが小さな鐘を鳴らし、4分後に王様が厳かに正確な時を告げる、と言ふ時計。当時、時間は神のものとされ、日没までを等分して教会が鐘を鳴らしたと言ふが、実際は教会が時間を支配してゐて、教会の思ふままに鐘を鳴らしてゐたらしい。市民は時計台を作り、時間を自分たちの手に入れる事で、教会からの独立を目指した。そのことで市民は責任感を持つやうになり、貧しい人の面倒を見ると言つた、教会がやつてゐたことも自分たちで行ふと決めた。「ふざけたピエロ」と言ふのは、時間を支配してゐた教会を表してゐるさうな。その他にも、アインシュタインが住んでゐた家とか、その近くにある時計台のこと、相対性理論のことなどにも触れてゐた。

さてこの番組、今回の旅の主人公は二人で、一人は現役を引退した時計師、ジャン・クロード・ニコレ(Jean-Claude Nicolet)さんと、若き時計師ベアト・ハルディマン(Beat Haldimann)さんだと思ふ。
ラ・ショー・ド・フォンにある25メートルの振り子を持つ時計はニコルさんが作つたもの。ニコルさんは時計界のノーベル賞と言はれるガイア賞の第1回目の受賞者で、星座版やカレンダーなど20の機能を持つ振り子時計なども手がけ、複雑なしかけを持つ振り子時計を得意としてゐる。引退後はシンプルな時計の持つ美しさに辿り付き、現在はなるべく少ない歯車で動く事を目標に、3つの歯車で動く振り子時計を製作中で、それを今日も上手く動かせない。シンプルな難しさに挑んで今年で30年になるさうだ。番組に登場した時、「今は現役を引退してゐる」と言ふナレーションと共に「上手く動かないんだよー。」と嘆いてゐたので、年齢の為に時計が作れなくなつてしまつた人なのかと思つて、まう少しで物悲しくなつてしまふところ、話しは違つた。新しいこと、誰もやらなかつた事に挑みつづけてゐる。
今年のガイア賞受賞者は、センタートゥールビヨンの美しい時計を作つたベアト・ハルディマンさん。この時計の特徴は、トゥールビヨンを文字盤の中心に浮かぶやうに配置した事と、時を刻む音を際立たせてゐる事だ。文字盤の中心で、まるで美しい心臓が動いてゐかのやうな芸術的な時計。同じセンタートゥールビヨンで、文字盤に文字はなく、時間の判らないデザインの時計もある。何時であるかは重要でなく、ただ時が流れてゐる事と鼓動を感じる事が出来るこのモデルは、ハルディマンさんの哲学を表してゐると言ふ。
ハルディマンさんの工房では、時計の90パーセントの部品を伝統的な作り方で手作りしてをり、そのやうな時計工房は、今では世界で唯一。1年間に製作出来る時計は3つ。
ハルディマンさんのサイトuhren-atelier.ch - und andere Domains günstig und einfach online kaufen auf top-domains.chuhren-atelier.ch - und andere Domains günstig und einfach online kaufen auf top-domains.chでは、動画でその素晴らしさを覗き見出来る。

番組の最後は、ベテラン時計師のニコルさん。引退後、3つの歯車で動く時計を目指し30年。
完成させられず人生が終はつても構はない。この時計を完成させられなかつたとしても、それで世界は何も変はらないよ。
と言ふニコルさんの言葉で番組は締めくくられた。

トゥールビヨンつて本当に綺麗。アンティークポケットウォッチ好きやアンティーククロック好き、文字盤好き、アンティークウォッチ好き、機械式時計好き。と云ふ方々には物足りなさがあつたかもしれないが、1時間に上手く纏まつてゐて楽しめた。