駄目だつたー

色んな催しで演奏するのは学生時代によくやるアルバイトで、かう言ふものに応募するなんて思つてもみなかつたけれど、落ちるだなんて、重石を置かれたやうな気持ちになりますね。落ち込みはしなかつたと感じてゐたけれど、それまで通常より練習してゐたので肉体的に疲れが出たなと感じた。
敗因は、初見が出来ないと言ふことにつきる。
初見と言ふのは、見たことも聴いたこともない楽譜を見て、その場で演奏する能力のことなのだけれど、受験の時ももちろん初見の試験はあつたし、まあ出来て当然とされる技能なのだらうけれど、私は初見が大の苦手なのである。受験とか、進級試験とかオーディションとか、今まで私はどうやつて乗り越えて来たのだらうと不思議になる。何をやつてゐたんだろうと。
しかも当日弾かされたのはピアノでもオルガンでもなく、パイプオルガンだつたのだ。そして渡されたクラシックの曲は出来ず、無理やりジャズを演奏してきた。対応してくれたスタッフの方は良く話を聴いてくれる人で、もし私を新たに採用しても、デビューは秋過ぎになるだらうし、「あなたのやりたいジャズ」ぢやないし、大した仕事ではないのよ…。と。そしてでも初見でやつて貰へなければ、当日楽譜を渡される事も多いから困るのだと。
かなり慰めて貰ひました。
「クラシックなんて出来る人、沢山ゐるんだもん。ジャズ出来る人なんてどのくらゐ?ジャズを頑張つたら良いと思ふ。」とか。「この仕事はパートみたいなもので、そんなに頑張るものぢやないから。」とか。
沢山慰めて貰ひました。
でもまづ、初見が出来ないと云ふのを少しづつ克服したい。私の理論の先生も初見が駄目で、「初見なんて出来なくても良いんだよ。あんなの出来る人は1回目の出来から向上しやしないんだからさ。回を重ねるごとに上手くなる人の方が良いに決まつてる。」なんて言つてゐて、上手いしから、そんなものかと思つて初見なんて重要視してゐなかつた。
その先生が同じバンドのメンバーに「それでもプロなら初見に強くなれ、1回でやれつて言ふんだよ。」なんて言はれてゐたのも耳にしてゐたけれど。
楽譜を見ても見なくても、その1回で出したい音を出す練習にも、初見の練習は役に立つなと、面接が終わつてから今日までの期間初見の練習と取り入れて見て思つた。出来た方が良いと思ふ。
ジャズをやり初めてたばかりの頃、視覚で弾いてゐるんぢやない?と言はれた事があつて、何だかそれは今も良くわからないんだけれど、見て弾く事に少し抵抗もあるんですよね…。でも。
まあ何はともあれ、色んなパターンを色んなキーでやつたり、初見で弾いたり、アドリブしたり、課題が山盛りになつた。
何にしても、やつてみて良かつた。やつて、失敗したり、失敗しなくても出来に恥を感じたり、感動したり、様々して、それを総括しないと前に進めない。
良かつた良かつた。